本校では、多くの6年生が、私立・国立の中学校を受験します。その皮切りとなるのが、11月30日の淑徳中学校と淑徳巣鴨中学校への内部選考試験です。試験を前に、6年生の健闘を祈って、増上寺でいただいてきた「勝ち運お守り」を渡しました。
浄土宗の大本山である増上寺は、江戸幕府を開いた徳川家康が大事にしたお寺です。代々の徳川将軍のお墓もあります。その一角に、徳川家康が生涯大事にしていたと伝えられる「黒本尊」と呼ばれる、煤で真っ黒にくすんだ阿弥陀仏像が安置されています。この「黒本尊」のご利益を願うのが、真っ黒な袋の「勝ち運お守り」です。このお守りを渡しながら、私は、6年生に次のような話をしました。
徳川家康は、幼少のころは人質になるなど、大変苦労に苦労を重ねながらも、最後は江戸幕府を開きました。その努力と我慢と運の強さは、日本一だと言われています。
お守りをいただいたからと言って、試験に合格するわけではないのは、皆さんもわかっていると思います。でも、このお守り、「合格祈願」ではないのです。「勝ち運」のお守りなのです。どんなところが、「勝ち運」なのでしょう?
徳川家康の一生を思い浮かべてください。家康は、全ての戦に勝ったでしょうか? 負けていますね。 徳川家康は、小さいころはお父さんを殺され、自分は人質に出され、信長には奥さんと息子を殺され、秀吉には先祖代々の領地を奪われて江戸に移された。長い人生の間には何度も、生死にかかわる散々な目に遭っています。よく生き延びて、最後に征夷大将軍になったものです。
家康は、いつも黒本尊に向かい、「南無阿弥陀仏」と阿弥陀様のお名前を呼び、お祈りしました。戦に負けても、家族や家臣を失っても、領地を失っても、涙にくれながら悲しみに耐え、祈り続け、戦国時代を生き抜いたのです。阿弥陀様は、家康を必ず勝たせてくれたわけではありません。でも、その時その時で、一番良い方向へ導いてくださいました。
皆さんも、これから様々な苦しみ、悲しみに出会うでしょう。誰にとっても、悲しみ、苦しみのない人生は、ありません。これから皆さんが立ち向かう中学受験も、喜びよりも、苦しみ、悲しみのほうが多いかも知れません。しかし、戦国時代と比べたら、生死に関わるようなことはありませんので、家康よりは気楽ともいえます。
けれども、一時は、つらい、苦しい。泣けて、泣けてしょうがない、というような時があるかもしれません。そんな時、この家康の黒本尊と、「勝ち運お守り」を思い出してください。今、つらく苦しくても、後から、ああ、これでよかったんだ、と思えるような未来に、かならず、阿弥陀様がつなげてくれます。家康のように、つらくても、あきらめず、最後まで自分の力を出し切る。すると、そこには、阿弥陀様がつなげてくれる、素晴らしい未来が現れます。家康のように希望を捨てず、努力する人には、かならず、ああ、これでよかったんだ、と思える未来が開けます。そのことを、思い出し、阿弥陀様にお祈りするために、この「勝ち運お守り」をお渡しします。
自分と阿弥陀様を信じて、頑張ってください。私も阿弥陀様に祈り、皆さんのことを応援しています。
今後、1月には、淑徳与野中学校でも内部選考試験が行われ、2月の東京の一般入試へと続きます。それぞれの児童が希望の中学校への進学に向けて、ラストスパートをかける時期です。睡眠を十分に取り、暖かくして、手洗い・消毒に気を付ける等、万全の体調で臨んでほしいと思います。