アクセス

校長便り

この記事は1年以上前の記事のため、内容が古い可能性があります。

「指月(しがつ)」と胸像

投稿日2019/7/4

 淑徳小学校は昭和24年(1949年)に開校し初代校長には長谷川良信先生が就任されました。先生は実に多くの論文や随想などを遺されていますが、その中に「月を指す」と題する次のような一文があります。
 「お月様のあるところを教えようとして、指で月を指し示すと愚かな人は、まず指だけを見て、かんじんのお月様には目もくれない。そこで教える人はいいます。『私の指を見ていてはいけない。指は月のあるところを示しているのだから、私の指のさす方向をたどって、空のお月さまをごらんなさい』という話があるが、真理のありか、理想の人間像の正体を示そうとして、あらゆる学問、あらゆる教育の営みがあるが、われわれはそうした方法論にばかり、うき身をやつして、月を見ようとして指だけ見ている愚かしさにおわっている場合がすくなくない。」(『長谷川良信遺滴』)
 これは「指月(しがつ)」という教えをもとにしたお話です。指は方法、月は本質を意味しています。つまり、手立てや方法ばかりに関心が向いていると物事の本質が見えなくなるということです。これは教育の仕事に携わる私たちにとっても大切にすべき教えです。教育の本質を見失った指導技術は役に立たないどころか罪悪となる場合もあります。
 このたび、本校創立70周年を機に初代校長の胸像を制作しようという話が持ち上がり、現在その準備に取りかかっています。10月に完成予定で設置場所は校舎玄関の右側です。この胸像には、初代校長に対する敬意とともに教育の本質を見失うことがないようにとの願いが込められています。胸像が意味するもの。それはまさに指月です。