平年より早く梅雨が明けたせいか、今年の夏はことのほか長くなりそうです。
先日、所用で沖永良部島の知名町を訪れました。役場からほど近い農家民泊を利用し、仕事を済ませた後、ご主人の船で「せごどん」のロケ地を案内していただきました。西郷隆盛は藩主の島津久光の逆鱗に触れ沖永良部島へ犯罪人として流刑に処されます。案内された先は、海岸に作られた野ざらしの牢(撮影後撤去)で死に直面する場面の撮影で使われた場所です。有名な「敬天愛人」は、島で経験した絶望と島民の慈愛があればこそ、西郷の座右の銘となったのでしょう。
ところで、日本で初めて子ども専門の在宅診療所を作った医師が東京にいらっしゃるのをご存知でしょうか。テレビのドキュメンタリー番組などでも紹介された前田浩利さんがその人。前田さんは、もともと病院に勤め小児がんの治療に全力を注いでいました。病院で治療の重圧に押しつぶされていた子が、自宅で両親と穏やかに暮らす姿を見て、治る見込みの薄い患者のために医師として何ができるか考えます。これが子ども専門の在宅診療所の始まりです。元聖路加国際病院院長の日野原重明先生の薫陶を受けてのこと。
再び、話を沖永良部島に戻しましょう。この地で知り合った方のなかに前田さんというご婦人がいらっしゃいます。地元婦人会のリーダーなどをなさった方で80歳を過ぎた今も大変お元気です。話をしているうちに、なんと、この方のご子息が前田浩利医師だとわかりビックリ仰天。ご縁とは言え、人と人との出合いは実に不思議です。沖永良部に行かなければ、「せごどん」の苦悩や前田医師の母上の存在に接することはありませんでした。滞在したのはわずか24時間ですが、かなり長い時間をこの島で過ごしたような気がいたします。