土門 拳(1909~1990)は我が国を代表する写真家の一人です。彼の作品の魅力は日本人の心を克明に写すところにあるといわれ、今でも国の内外から高い評価を得ています。代表的な作品集には『古寺巡礼』や『筑豊のこどもたち』などがあります。『筑豊のこどもたち』は、筑豊炭田の厳しい現実を子供たちの表情を通して写し出した名著として知られています。1960年に刊行されましたが絶版となり、その後1977年に新装版が出されます。同書には「弁当を持ってこない子」の写真が3ページにわたって収録されています。

 石炭産業がさびれ、筑豊炭田の人々の生活が苦しくなっていく中、学校へ弁当を持っていけない子供たちが出現します。うまそうに弁当を食べている子供たちのとなりで、弁当のない子供は気を紛らわすために雑誌を読んでいます。そんな子供たちの様子と背景にある社会のひずみを土門はレンズを通してリアルにとらえています。戦後の日本は急激に発展しますが、そこには豊かさと貧しさが同居しています。同じ日本なのに、茶の間でテレビを囲んでいる家庭もあれば子どもに弁当を持たせられない家庭もあるという現実を、写真を通して伝えたかったのではないでしょうか。

 先週の朝礼で、この「弁当を持ってこない子」の話をしました。時代背景や生活環境が今の子供たちと異なっていたり私自身の話術が乏しかったりしたせいもあって、伝えたい内容をうまく伝えることはできませんでした。社会科や理科の授業では、考える楽しさを味合わせる学習にもっと取り組ませたいのですが、カリキュラム上どうしても思考の鍛錬より知識の習得(暗記)が優先してしまうようです。これも厳しい現実の一つです。